THIEFS Interview

ジャズがハイブリッドな音楽であることを証明する気鋭のトリオ、シーフスに訊く!

ringsから9月19日にリリースされるアルバム『グラフト』を制作したジャズ・トリオ、シーフス(Thiefs)のインタビューをお届けする。
 
フランス人とアメリカ人の混成グループで、現在はパリで活動するラッパー/ジャズ・ポエットのマイク・ラッドや作家でもあるガエル・ファイユ(半自伝的小説『ちいさな国で(Petit Pays)』は日本でも翻訳出版されている)、それにピアニストのアーロン・パークスも参加した『グラント』は、“文化のハイブリッドと移民”というテーマもさることながら、多様な音楽をジャズとして咀嚼した演奏自体も素晴らしい。
 
質問に答えてくれたのは、中心メンバーのベース奏者キース・ウィッティ(写真真ん中)とサックス奏者クリストフ・パンザーニ(写真右)。共にソロ・プレイヤー、あるいはプロデューサーとしても既に様々なキャリアを積んできた二人だ。
 
 
ーー それぞれのキャリアを教えてください。
 
キース・ウィッティ(以下K): 僕はニューヨーク出身で、ニューヨーク市立大学シティカレッジでジョン・パティトゥッチのもとで学び、修士号を取得した。ニューヨークのアバンギャルド・シーンでベースを演奏し始めたことが、プロミュージシャンとしてのスタートだったんだ。
 
その後はニューヨークのダウンタウン・シーンのミュージシャンと何年間も共演し、フリージャズ界の伝説的サックス奏者デヴィッド・S・ウェアがバンドリーダーを務めたグループに最後の年に加入したんだ。
 
同時に、ヒップホップ系のバンドで演奏することもあって、そこからアメール・ラリューのバンドで10年間演奏した。
 
東アフリカのボーカリストのソーミと仕事することが多くて、彼女の過去2枚の作品(『The Lagos Music Salon』『Petite Afrique』)をプロデュースし、頻繁に一緒にツアーもしたんだよ。ジャズ・ドラマー、ユリシーズ・オウエンス・ジュニアの過去2枚(『Onward & Upward』『Falling Forward』)もプロデュースした。

 
クリストフ・パンザーニ(以下C): 僕はフランスのアルプスの小さな村で育ったんだけど、家の向かい側に音楽学校があったら、自然とそこに通うようになって、7歳からサックスを演奏するようになった。
 
音楽学校ではクラシックを勉強していたけど、隠れて友達とジャズやファンクを演奏していたんだ。クラシックのサックスと室内楽の学位で大学を卒業してから、ジャズを勉強するようになった。
 
ルクセンブルグで開催されたワークショップでカーラ・ブレイとスティーヴ・スワロウに出会えたことが転機になった。カーラ・ブレイのビッグ・バンドにメンバーとして加入し、ECMでアルバム『Appearing Nightly』をレコーディングしたんだ。
 
ホーカス・ポーカスという有名なフレンチ・ヒップホップのバンドに加入し、数年間は頻繁にこのバンドでも演奏するようになった。2015年に、7人のピアニストとのデュエットを収録した自分のファースト・ソロ・アルバム『Les âmes perdues』を、リリースしたんだ。
ーー シーフスが結成された経緯と、このバンドが目指している方向性を教えてください。
 
K: クリストフと僕は、French-American Jazz Exchangeの支援を受けて、シーフスを2010年に結成した。最初は、ドラマー/ボーカリストのギレルモ・E・ブラウンとのトリオとして始まって、最初のアルバム『Thiefs』はこの編成だった。
 
僕らの音楽的ビジョンはシンプルだった。境界線を持たないこと、自由に作曲をし、好きな音をなんでも使うこと。そして「ジャズ」の常識に縛られないながらも、これまで影響されてきた全ての音楽を取り入れて、それを「ジャズ」的なメンタリティで探求すること。
 
 
ーー マイク・ラッドやガエル・ファイユのラップ/スポークン・ワードは『グラフト』で重要な要素だと思います。彼らをフィーチャーした理由は?
 
K: このアルバムのコンセプトは、文化のハイブリッドと移民がテーマになっているから、この二人のMCはぴったりだった。
 
マイクは黒人の血を引くアメリカ人だけど、10年以上前にパリに移住した。ガエルはルワンドとフランスのハーフで、両方の国に住んだことがある。だから二人は、このトピックについて経験からリアルに語ることができるんだ。それに、二人は言語の上でもスタイルの上でもお互いを補い合うことができるんだ。
 
マイクはとても自由で生々しくて、同じフレーズを繰り返すことはほとんどない。ガエルは緻密で、計算されていて、構築された表現方法なんだ。
ーー  現在の活動基盤はニューヨークと言えますか? またニューヨークのジャズ・シーンとはどのような関係にあるのでしょう?
 
K: イエスとノーだね。デヴィッドと僕はニューヨークを拠点にしていて、最初のシーフスのミーティングはニューヨークで行われた。
 
2枚のアルバムはだいたいニューヨークでレコーディングされたけど、パリは僕らにとってニューヨークと同じくらい大事な街だよ。僕とクリストフはパリで出会ったわけだし、パリでたくさんのライヴをやってきた。
 
でも、パリとニューヨークの両方のシーンは僕らを一員として受け入れてくれるとは思わない。僕らはどこかのシーンのミュージシャンを集めた集団というより、バンドなんだ。バッド・プラスとかブライアン・ブレイド・フェローシップに近いと思う。その両方のバンドは、どこかのシーンに属していたわけじゃないと思う。
 
 
ーー 『グラフト』について、どのような反応を得ていますか?
K: 全体的にとてもいいし、メディアでも評価された。BandCampの記事では、リリース日に「Album Of The Day」に選んでくれた。また、このアルバムをリリースすることでいくつかのフェスにも呼ばれたんだ。
 
”Beat One”はApple Musicの「On The Corner」というプレイリストにフィーチャーされたしね。ニューオーリンズのラジオ局は、しばらくナンバーワン・ジャズ・アルバムとしてチャートに入れてくれた(今回、僕らの方からラジオ向けのプロモーションはしなかった)。
 
ニューヨーク・エリアで最大のラジオ局WBGOは"The Checkout”というPodcastをやってるんだけど、1時間の番組でシーフスを特集してくれたよ。
 
C:フランスの視点から言えば、『グラフト』はメディアやラジオでの反応が素晴らしかった。キースが言ったように、アルバムを聴いたり記事を読んで、フェスから直接オファーが来たりした。フランス人のミュージシャンとして、「Down Beat」に特集されたのは夢のようだったよ。あと、日本のレーベルからリリースできるのも、夢だったしとても光栄だね。
※コンセプチュアルなアルバムの内容やゲストとの関わりなどにも踏み込んだインタビューは、『グラフト』のライナーノーツに掲載されています。ぜひそちらもお読みください。
 
 
インタビュアー:原 雅明
通訳:バルーチャ・ハシム
THIEFS Live @ LA DYNAMO Banlieue Bleue 〜2018年パリでのライブ映像〜

アーティスト : THIEFS(シーフス)
タイトル : Graft(グラフト)

発売日 : 2018/9/19

価格 : 2,300円 + 税

レーベル/品番 : rings (RINC43)

フォーマット : CD

JAZZ / HIPHOP

Tracklist : 

1. The Limbs They Acquired Over Years and Continents   
2. I Live in Fear (feat. Mike Ladd & Gaël Faye)     
3. Fields (feat. Mike Ladd)    
4. Pas d'ici I (feat. Gaël Faye) 
5. I.W.B.A.H.
6. Beat.One. (feat. Grey Santiago & Edgar Sekloka)   
7. Anthro (feat. Guillermo E. Brown)    
8. Pas d'ici II (feat. Mike Ladd & Aaron Parks) 
9. Make a Fist  
10. The Leaf Node (feat. Gaël Faye) 
11. Pas d'ici III

12. Olive Island (Japan Bonus Track)

13. Sans Titre (Huile Sur Toile) (Japan Bonus Track)

© rings Official

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